近年「エッジコンピューティング」というワードに注目が集まっています。これまではオンプレミスからクラウドへのシフトがさかんにいわれてきましたが、今後は、クラウドとエッジの両方を組み合わせた分散型アーキテクチャがスタンダードになる可能性があります。
リアルタイム性や低遅延、セキュリティ強化などのメリットが享受できるのはもちろんのこと、昨今主軸になっている「データ活用」のビジネスに、エッジコンピューティングを活用することにも期待が高まっています。
そこで今回は、エッジコンピューティングとは何か、そしてメリットや事例をわかりやすく解説します。
エッジコンピューティングとは、ユーザーやIoT端末等のデバイスと、物理的に近い場所にエッジサーバなどのエッジプラットフォームを分散的に配置し、データ解析や加工などの処理をそのエッジプラットフォーム上で行うネットワーク技術を指します。
特徴は「ユーザーやデバイスの近くにおける処理」と「分散型」という点にあります。従来のクラウドコンピューティングの場合、「中央集中型」となり、デバイスから直接クラウドへすべてのデータが集まります。一方で、エッジコンピューティングでは、まずIoTデバイスの近くにあるエッジサーバがデータ処理を行ってからクラウドに結果データを送信するという大きな違いがあります。
エッジコンピューティングは、従来のネットワークや、主にクラウドコンピューティングと比べて、多数のメリットが期待できることから、注目を集めています。その主なメリットを3つご紹介します。
1.低遅延・リアルタイム性を実現
エッジコンピューティングは、クラウドにデータを送らず、エッジ側、すなわちユーザーやデバイスの近くでデータ解析・処理を行うため、リアルタイム性が高く、システムへの負荷や通信の遅延を抑えることが可能になります。
2.セキュリティが強化される
特にIoTの分野ではセキュリティの脆弱性が問題視されていますが、エッジコンピューティングの場合、IoTデバイスの近くでデータ処理を行い、その処理結果のみをクラウドに送信する流れであるため、データ送信は外部ネットワークを介することがないことから、情報漏えいを防ぎます。
3.データ通信料の削減につながる
2でご説明した通り、エッジサーバでデータ処理後、必要なデータのみをクラウドに送信することができるエッジコンピューティングは、すべてのデータをクラウドに集約するクラウドコンピューティングと比べて、データ通信料の削減にもつながります。
エッジコンピューティングは、様々なシーンへの応用が可能です。ここでは3つのシーンをご紹介します。
1.IoTへの活用
エッジコンピューティングは、すでにIoTの分野では世界的に多く活用されており、市場も拡大しているといわれています。特に製造業では、製造の現場のセンサーや測定器などからのデータを処理する際、膨大なデータ量になればなるだけクラウドデータへの集約は非常に困難となります。そこでエッジコンピューティングは低遅延・セキュリティという利点が重宝されています。
2.エッジAIへの活用
エッジAIとは、エッジコンピューティング内のデバイスにAI(人工知能)の学習モデルを実装し、AIによって異常を検知して判定する方法です。エッジAIは、車の自動運転技術や小売店や飲食店、スマートフォン、ウェアラブルデバイスなどに活用されています。
3.5Gへの活用
現在、「高速大容量、高信頼・低遅延通信、多数同時接続」の特徴を持つ5Gが徐々に浸透してきている状況ですが、従来のクラウドコンピューティングでは、サーバ負荷が高く、サーバまでの通信距離が遠いということからデータ送信の遅延が懸念されています。これでは5Gの利点を損ねてしまいます。
そこで注目されているのが、エッジコンピューティングの活用です。分散型であるためサーバ負荷低減と通信の低遅延を実現することから、5Gの特徴を最大限に発揮することが期待できます。
エッジコンピューティングは、メリットが多く、今後、多様な分野に活用されていくと見られる一方で、課題もあります。ここでは主に2つの課題をご紹介します。
●コストが高くなりがち
エッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングに比べて、コストが高くなりがちといえます。分散型であるため、分散すればするだけエッジサーバを配置する拠点が増えます。また、システムもその分、複雑になっていくことから、開発から運用までの負担とコストが増大します。
●エッジサーバの運用者を何人も確保する必要がある
エッジサーバの運用においても、負担がかかります。なぜなら、エッジサーバが増えれば増えるだけ利便性は増しても、運用者が求められるためです。
この課題を解決するためには、「一元管理」がキーワードとなります。エッジではあっても、リモートから少ない運用者による管理ができるように、管理を効率化する仕組み作りが肝となります。
ここで、エッジコンピューティングの活用事例をご紹介します。最も活用の期待が高まっているIoT関連の製造業をはじめとしたエッジコンピューティングの管理を担う「Volterra」というサービスを用いた事例です。
●Volterraとは?
Volterraは、米国企業のVolterraが提供するサービスで、主要な機能は、分散されたエッジデバイスに対してアプリケーションを配信する機能と、エッジデバイス間の接続の一元管理が可能な機能の2つがあります。Volterraの主なサービスは「VoltStack」「VoltMesh」「VoltConsole」の3つです。
「VoltStack」は、エッジデバイスとしてアプリケーションを実行する分散型アプリとインフラのためのプラットフォームサービスで、「VoltMesh」はVoltStack間の接続やセキュリティ等のネットワークサービスを提供する分散型ネットワークとセキュリティサービス、「VoltConsole」はVoltStackとVoltMeshを単一画面で統合管理するサービスです。この3つを組み合わせてエッジコンピューティングの一元管理を、セキュリティを確保しながら実現することが可能です。
データを軸にしたビジネス展開が推進されている中、分散された環境の中でのデータのやりとりにおいて好適な、マネジメントツールとして注目を集めています。
●IoTにおけるVolterra活用事例“製造業・流通業向けIoTゲートウェイ”
【製造業・流通業のよくある課題】
製造業・流通業では、工場や現場にある1万以上もあるデバイスを管理するニーズが顕在化しています。特にエッジデバイス管理、アプリケーション管理、セキュリティ管理、USBデバイス管理が求められています。
【課題解決策】
こうした課題を解決するために、シンプルなエッジデバイスゲートウェイを構築します。Volterraを各デバイスのエッジに導入し、USBデバイスの接続コントロールを行い、Volterraのファイアウォールでアプリケーションの宛先を制御するようにエッジコンピューティング環境を構築。これにより、リモートからアプリケーションとセキュリティポリシーの一斉配信を行うことができます。
従来型サービスよりも、高度なアプリケーション管理・制御や、柔軟性が必要なアプリケーション基盤としての利用が可能になります。
エッジコンピューティングは、リアルタイム性、低遅延、高セキュリティの観点から、今注目を集めており、すでに浸透し始めています。今後は、クラウドコンピューティングと効率的に組み合わせた形で発展していくと見られています。
重要になるのは、一元管理を行い、いかに課題であるコストと運用管理の負担を抑えるかという点にあります。エッジコンピューティングの導入・構築を成功させるためには知識や情報が重要となります。さらに詳細をお知りになりたい場合には、ぜひ以下よりお問い合わせください。